3月21日は国連が制定した“国際人種差別撤廃デー”だそうです。
あまり聞きなじみのない記念日ですが、最近では新型コロナウイルスの影響によるアジア人差別など、人種差別が原因で起こった痛ましい事件のニュースを耳にすることも多くなりました。この日にちなんで、読書を通じて、異なる人種や信仰・文化をもつ人たちに思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。
1.『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』
アンジー トーマス∥作,服部 理佳∥訳 岩崎書店 (YA 933 /ト /)
女子高生スターはある日、幼なじみの黒人少年カリルが目の前で白人警官によって射殺される現場に居合わせる。何もしていないのに、カリルに射殺される原因があったかのように報道される現状に、スターは覚悟を決めて声を上げる。
貧困の連鎖、幼くして身近にある麻薬やギャングの抗争など、現代のアメリカ社会に存在する人種問題、ブラック・ライヴズ・マターの背景を知るのにおすすめの物語です。
2.『ねえさんの青いヒジャブ』
イブティハージ ムハンマド∥文,S.K.アリ∥文,ハテム アリ∥絵,野坂 悦子∥訳 BL出版 (E/ア/)
ファイザーのおねえさん・アシヤが、はじめて学校にヒジャブ(イスラム教の女性が頭を覆い隠すために身に着けるスカーフのようなもの)をつけていく日、ファイザーは美しい姉の姿を誇らしく思う気持ちとわくわくでいっぱい。けれど、文化の違いを理解できずに、ヒジャブをばかにしたり、いじわるな言葉を投げかける子たちが…。
少数派であるがゆえに差別やいじめを経験しても、自信をもって生きる姉妹とその母親の言葉に勇気をもらう絵本。
3.『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ブレイディみかこ∥著 新潮社 (376 /ブ/)
イギリスに住む、白人の父親と日本人の母親の下で、人種も貧富も入り混じる元・底辺中学校に入学した息子。そこで、人種差別・格差・性・アイデンティティなど世界共通の社会問題にぶつかりながらも、冷静に、他者を思いやり、成長していく姿を母親の視点から描いたノンフィクション。
母親の母国・日本で投げかけられた言葉や体験も綴られており、ハッとさせられるとともに、日本にいるとなかなか考えが及ばない多様な考え方に気づかせてくれる一冊。
4.『パチンコ』上・下
ミン ジン リー∥著,池田 真紀子∥訳 文藝春秋 (933 /リ /1, 933 /リ /2)
4世代にわたる在日コリアン一家の人生を描いた大河小説。日本統治下の韓国の田舎に住む夫婦は、娘を授かる。その娘はやがて夫と大阪・鶴橋に渡り、酷い差別や劣悪な環境の中で懸命に働き、戦中から戦後までを生き抜く。そして物語はその子ども、孫の人生へと続いていく。
上下巻合わせて700ページ以上ありますが、何世代にも続く人種差別の中で、それぞれが苦悩と葛藤を感じながらも力強く生きようとする姿にどんどん引き込まれ、あっという間に読んでしまう物語です。